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飾りたくなる写真


近年、写真のように細密に絵を描く作家が増えている。画材も色鉛筆とかスプレーとかいろいろで。私も画家を志していた頃にはデッサン力を磨くために色鉛筆や油絵具などで細密描写画を描いたことがあるが、カメラがまだ無い時代の画家たちはそれが普通の仕事だった。優れた職人技が評価され宮廷のお抱え画家になったりもしたが、カメラ・オブスキュラ(暗い部屋)が考案されると画家たちはその機能を活用してモチーフを転写し絵画に仕上げた。遠近法という手法が主流になったのは現在の写真機の元祖、カメラ・オブスキュラのお陰だろう。ただ、肉眼でモチーフを見ながら描く時、我々は両眼で対象を見ている。カメラ・オブスキュラも現在の写真機も単眼なので、両眼で見て描いた描写とは異なる。どちらが良いかという問題ではない。仕上がった作品が観る人を驚かせ、感動させることが出来るのならばテクニックはあくまでも結果のための通り道だから。レオナルド・ダ・ヴィンチは従来の幾何学的透視図法の他に「遠方になるほどぼやけてみえる」という空気遠近法を発見したと言われる。カメラのレンズで絞りを開けて撮影するとピントを合わせたところいがいがボケる。絞れば前後の被写界深度が増してボケが少なくなる。人間がちょっと離れた壁にあるカレンダーの数字が見にくいと目を細めて見るのと同じような原理だ。写真は普通はどこかしらにピントを合わせて撮影する。そして前後、特に後ろの部分をぼかしたりしてピントを合わせた主役をより引き立たせるように撮る。それらが上手く行くなと思うところでシャッターを切るわけである。もちろん、写真の良し悪しはそればかりでなく、光の方向、色彩の見え方、二次元的な画面分割の構成だけでなく、奥行き感も意識した三次元的な画面構成が肝心だ。絵画では色価による遠近の表現を重要な要素に加えられるが、写真も同じ。明るい部分、明るい色は前に出るように感じ、寒色、暗い部分は奥に感じる。二次元的な平面にプリントして額装した作品に十分な奥行き感、立体感が得られるなら、それを飾る壁面にも別の空間を感じることが出来るだろう。人間は近くの物をじっと見つめれば眼も疲れてくるが、遠くの山々は海の水平線を眺めると逆に休まり、気持ちも落ち着く。仕事部屋に一枚の写真や絵を飾り、目の休め処、気持ちの落ち着くところを作るのは大事なことだと思う。デスクの上ならポストカードや2Lサイズくらいの写真がちょうどよいだろうが、6畳以上のリビングなどであればA4以上、できればA3くらいの作品が適当だと思う。不思議なことに写真は大きければ大きいほど引き立って見えてくる。この枝垂れ桜の作品もA3くらいの大きさで飾って楽しみたい。

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