新宅ご夫妻の写真展
新宅ご夫妻に出会ったのは1988年2月20日から3月6日まで白山にあったギャラリー、アール・モナリザで開催した写真展を見に来て頂いた時だった。「キャパ」という写真雑誌に掲載された展覧会案内を見て来られたそうだが、イタリアに大変興味を持ち、その時に私が撮影取材で行くときには同行させて下さいと要望があり、ガイド料とか写真の指導料というものは頂かなかったが旅行費の一切を引き受けて頂いたり、日放ツーリストというNHKの看板を背負った旅行代理店を紹介して頂き、撮影ツアーを行ったり、89年から93年の間に3、4回ほど一緒にイタリアを撮り歩いた。真冬に出雲方面へご主人が運転する車で撮影旅行に同行させて頂いたこともあった。ご主人は眼科医でとても温厚でワイン好きの紳士。女優になれば大スター間違いなしの美しい奥様は医療関係の専門誌の出版社を経営していたそうだが、それを他の方に譲って、ご主人と写真を趣味とした人生を満喫していた。新宅夫妻はNHK文化センター青山教室の松本徳彦氏の指導を受けていたので、私があれこれ写真撮影を指導するということは控えていた。ただ、一緒にイタリアを旅行し、撮影スポットに案内することをメインにしていたが、ご夫妻とも研究熱心で、その情熱がその後、各地で開催される大規模な展覧会を実現する源になったのだろう。私がイタリア案内を引き受けていたのは3,4回だったが、その後はご夫妻の甥にあたり、著名なテノールの歌手である佐野成宏さんがモデナでパヴァロッティの師匠でもあったアリゴ・ポーラの指導を受けるためにモデナに住むことになり、それからは佐野さんがイタリアの案内役を受け継いだ。イタリアで佐野夫妻とヴェネツィアで食事をしたり、コモで開催された佐野さんのコンサートへご夫妻に誘われて行ったこともある。その後、ご夫妻はイタリアのお祭りをテーマに撮り歩くようになり、展覧会にはアッシージやサルデーニャなどのお祭りの写真も多く展示されているが、そのテーマは松本先生の提案だった聞いている。私はずっと「イタリア、人景色」のテーマで写真展を開催し、取材撮影も風景と人物のスナップをメインにやってきたので、私とご夫妻が同行した時の写真にはほぼ同じ瞬間に撮影された作品がいくつもあり、写真展を見るといろいろなことが思い出され感慨深い。ご主人はコロナ禍のさ中の2020年11月5日に96歳と5が月の人生を閉じられたが、コロナ禍ということで、そのお知らせは昨年の11月のお手紙に認められていた。そのお手紙でこの度、96歳になられる奥様が目黒区区民ギャラリーで展覧会を開催することも書かれていて、それがこのブログで紹介する写真展である。写真を大事な趣味として研鑽を重ねられた新宅ご夫妻のライフワーク、是非、多くの友人たちにも、来場頂ければとここに紹介するしだい。
1988年、私の写真展「イタリア、人景色」の会場に訪ねてこられた時のご夫妻。
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