南イタリアの魅力
イタリアの魅力とひと口に言っても南北の違いは大きい。更に、地中海側とアドリア海側、そしてシチリアやサルデーニャなど島々の固有のキャラクターもある。ただ、大雑把に言えば、イタリア的、イタリア人的なるもののイメージは南イタリア、ことにナポリやシチリアを思い浮かべるだろう。それはアメリカやヨーロッパで作られたイタリアを舞台にした映画の影響も少なくないが、実際に数十年、イタリア全土を歩いてみると、映画のイメージもあながち間違いではないし、ちょっと誇張されたり、隠された部分もあるので、一概にそれが全てではないことは当然だ。それを踏まえて言うならば、やはり南イタリアをひと口に言えば「貧しいかもしれないが人情味は豊か」ということ。
そして、人が生きることので最も大切な要素ではないかと思う。パレルモの大聖堂の向かいにあるにもかかわらず、昼でも薄暗い路地がある。そのひとつ、vicolo Brugno(ヴィーコロ・ブルーニョ)。初めてこの路地を見れば、誰でも入っていいものか躊躇するだろう。ナポリのスペイン地区の路地に似た雰囲気がある。しかし、その危うさにも惹かれるものがあるのでちょっと勇気を出して歩いていく。すると太ったおばさんが椅子に腰かけ、その傍らにはベビーカー。中には黒人の赤ちゃんがすやすやと眠っている。おばさんは白人だから、きっと近所の黒人家族の子供を預かって面倒をみているのだろう。イタリアでは黒人の女性が介護の仕事をしていることが少なくない。小さな子供がいても働きに出る必要があるから、その間、近所のおばさんに面倒をみてもらっている、きっとそういうことだろう。反対側に開け放たれた扉からキッチンが見える。ガスコンロの上には大きな鍋があり何かを煮込んでいるようでガスの青い炎が見える。おばさんに、中を撮ってもいいですか?声を掛けると笑顔で「どうぞ、好きに撮って」と許可をもらった。ナポリではちょうどパスタの準備だったので、一緒に食べて行けと誘われたこともあった。キッチンの中には日本の仏壇のようにキリストやマリア像のイコンなどがたくさん飾られている。南は北よりも信仰が厚いのはそれだけ神頼みしたくなる事が多いからだろう。
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